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2018年2月15日 (木)

湊かなえ「リバース」(講談社)

評価3

 人間ドラマとして楽しめる。最後の最後で、友人の本当の死因が明らかになるオチはなくても、良い物語だと思う。

 以下、ネタバレあり。
 深瀬和久は大学4年のとき、ゼミの友人らと旅行に出かけた際に、結果的に友人広沢に飲酒運転をさせ、事故死させた。
 深瀬の趣味はコーヒー。勤務後に通うコーヒー店で美穂子と知り合い、交際する。ある日、美穂子は「深瀬は人殺しだ」とのメッセージが届いたと言い、深瀬は事故の話を打ち明け、疎遠になる。事故当時、一緒にいた友人らの周囲にも同様のメッセージが届く。
 深瀬は広沢の両親やかつての同級生らに話を聞いて回り、卒業アルバムも入手する。広沢には恋人がいたことが判明する。

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2018年2月11日 (日)

吉田修一「犯罪小説集」

評価2

 五編から成る短編小説集。実際に起きた事件を題材に、事件の背景、犯人や関係者の心情などを描く。
 これで終わり?といった結末ばかりで、トリックが見破られたり、何らかの真相が明らかになったりするミステリーではない。個人的にはその点ががっかり。

 以下、ネタバレあり。

 それぞれ、実際に起きた「栃木県今市市の小一女児殺害事件」「首都圏連続不審死事件」「大王製紙横領事件」「山口県周南市金峰で起きた5人殺害放火事件」「ロッテの小川博元選手の強盗殺人事件」(清原和博元選手の覚醒剤事件との説も)に取材したらしい。

「青田Y字路」(あおたのわいじろ)
 小学生女児が行方不明になり、10年が経過。またしても別の女児が行方不明になる。外国人の母を持ち、差別されてきた青年が疑われる。

「曼珠姫午睡」(まんじゅひめのごすい)
 小中学校が同じだった女性ゆう子が50歳を目前に殺人事件の容疑者として逮捕された。英里子は友人らのフェイスブックや報道で、ゆう子の人生を追う。

「百家楽餓鬼」(ばからがき)
 大手運送会社の御曹司がバカラにはまる。

「万屋善次郎」(よろずやぜんじろう)
 閉鎖的な村で、長老格の男性とささいなことから険悪な関係になってしまった男性は、狂気にかられ、大量殺人を犯す。

「白球白蛇伝」(はっきゅうはくじゃでん)
 プロ野球選手として一時成功したものの、けがで引退した男。派手な生活を続けるが、長続きするはずもなく、ファンだった男性の経営する会社で雇ってもらうが、給料の前借りを続けた上、断られ、罪を犯す。

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柚月裕子「臨床真理」(宝島社)

評価3

 2008年の「このミス」大賞受賞作。知的障害者施設を舞台にした陰惨な事件がテーマだが、途中でだいたいの流れは分かってしまう。

 以下、ネタバレあり。

 知的障害者施設で少女、彩が自殺とみられる死を遂げた。親しかった入所者の藤木司は、施設代表の安藤に殺されたと訴える。臨床心理士の美帆は、司を担当。言葉の色が見えるという司の能力を信じて、彩の「自殺」を調べる。

 友人の警官から、同施設から特定の企業への就職者が多いとの情報を得て、施設の少女たちが関係者との性行為を強要されていた証拠を入手するが、彩に関しての証拠だけが出てこない。
 彩が残したUSBメモリーのデータを解読すると、彩の相手は意外な人物だった。

 校閲ミスが散見されるのが非常に残念。以下に挙げたほかにも恐らくあるでしょう。宝島社はしっかりしてほしい!

 177ページ「栗原は少女をどこかで、たしかに会っているのだ。」→「少女と」

 309ページ「カッターの刃が、薄暗い風呂場鈍く光る。」→「風呂場に」

 319ページ「どこにメス入れれば骨を断てるかは知っている。」→「メスを」

 325ページ「深い自愛に満ちた目で美帆を見た。」→「慈愛」

2018年1月 7日 (日)

柚月裕子「検事の本懐」 (宝島社文庫 )

評価4

 地方勤務の若い検事、佐方貞人を主人公とする5編から成る連作短編集。「事件をまっとうに捜査するだけ」という佐方の真摯な捜査姿勢に打たれる。読み進めるうちに、佐方のルーツが浮かび上がってくる。
 ただ、佐方の周りの警察官や検察上層部の捜査があまりに杜撰で、佐方のすごさというよりは、周囲のアホさ加減が引き立ってしまう。

「樹を見る」
 連続放火事件の容疑者が逮捕されたが、容疑者は、犠牲者が出た一件だけは犯行を否認。佐方は独自に捜査し、この一件だけは別の犯人の犯行であることを見破る。

「罪を押す」
 出所したばかりの男が腕時計を盗んだとして逮捕された。男は自供しているが、佐方は、男の息子の手紙から、えん罪を疑う。

「恩を返す」
 高校時代の同級生だった女性から佐方に12年ぶりに連絡があった。警察官に脅迫されているという。佐方は郷里の広島に戻り、悪徳警察官と対峙する。佐方の子ども時代、高校生時代が明かされる一編。

「拳を握る」
 佐方は、東京地検特捜部の疑獄捜査の応援に駆り出される。上層部の意向とは違った捜査結果を提出し、担当を外されるが、正しい見立てを進言。上層部の手柄として捜査は結実する。

「本懐を知る」
 横領で投獄され、死亡した佐方の父を巡る真相が明らかになる。佐方の父は、かつて恩を受けた建設会社社長の死後、その遺産を横領した罪で実刑判決を受け、獄中で死亡した。起訴猶予か執行猶予に持ち込むことは可能だったにもかかわらず、裁判で一切、弁明しなかった。その理由とは。

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2017年12月30日 (土)

中町信「模倣の殺意」(創元推理文庫)

評価2

 江戸川乱歩賞の最終選考まで残った1970年代の作品。
 どういうこっちゃと楽しく読んでいった。「探偵が犯人」という言葉がなんどか出てきたが、読み進めても、それはないだろと思っていたら! 叙述トリックでがっかり。あり得ない偶然。

 関係者が、警察官でもない人に、他人のプライバシーを話しすぎるのが不自然。今とは時代が違うとはいえ、お客さんのことをべらべらと話す旅館の女将とか部屋係って…

 以下、ネタバレあり。
 新進作家、坂井正夫が自宅で死亡しているのが見つかった。死因は青酸カリ。警察は自殺として処理したが、婚約者の中田秋子は、坂井の家に出入りし、坂井に多額の現金を渡していた遠賀野律子を疑い、調べる。一方、坂井と同人誌をつくっていた作家、津久見は、坂井の作品が、亡くなった大作家が数年前に発表した作品の盗作だとの疑惑を知らされる。津久見は、坂井によって自殺に追い込まれた妹を持つ雑誌編集者、柳沢を疑う。
 
 中田は律子のアリバイを調べるが、そのさなかに律子は事故死する。また、津久見は柳沢のアリバイを崩すが、柳沢は犯行を否認する。一方で、坂井の作品を盗作していたのは大作家の方だったことを明かす。
 この先を書くと、ネタバレの本質部分に近づいてしまうので書きません。
 
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2017年12月23日 (土)

東野圭吾「素敵な日本人」

評価3

 9編から成る短編集。
 短編ということもあり、軽い作品ばかりだが、最初の「正月の決意」以外はそこそこ楽しめた。

「正月の決意」
 初詣に行った老夫婦が、町長が裸で倒れているのを発見。あまりにもあり得ない設定で、次の作品に進むのがためらわれるほど、つまらなかった。

「十年目のバレンタインデー」
 10年前に別れたかつての恋人から食事に誘われた作家。恋人は作家の罪を暴く。

「今夜は一人で雛祭り」
 娘が名家に嫁入りすることになり、やっていけるかと懸念する父親。今は亡き、妻も、姑との関係で苦労したと考えたからだったが、娘から、ひな人形にまつわる秘密を示唆される。

「君の瞳に乾杯」
 合コンで知り合った女性とアニメの話で意気投合。しかし、相手が化粧を落としたところで、ある人物だと気づく。この男は実は…

「レンタルベビー」
 SF。子どものない夫婦がロボットの赤ちゃんを使って疑似子育てを体験する。最後のオチはどう評価したらよいか…

「壊れた時計」
 依頼を受けた盗みに入った先で、住人が帰ってきてしまった。誤って死なせてしまったが、その腕時計が壊れているのに気づく。不自然なアリバイ工作と疑われるのを避けるため、時計店で修理するが、それがあだに…

「サファイアの奇跡」
 小学生の女の子が神社で野良猫イナリと仲良くなるが、イナリは交通事故に遭い、動物病院に運ばれ、死んだと聞かされる。年月がたち、女の子は動物病院で働くようになる。そこに運び込まれたサファイア色のペルシャ猫を見て、イナリと気づく。イナリに何が起きていたのか。

「クリスマスミステリー」
 年上の女性脚本家の力を借りて人気を得た俳優。女性殺害を企てるが失敗。しかし、女性は死亡しているのが見つかった。俳優は刑事に追い詰められる。

「水晶の数珠」
 名家の跡取りでありながら、俳優になることを目指し渡米した男性。男性を勘当した父の余命が短いと姉から連絡を受け、帰国するが、父は電話をかけてきて息子を追い払うようなことを言う。男性は会わずに米国に戻る。やがて父が死に、代々伝わる水晶の数珠を相続する。1度しか使えない数珠の不思議な力を父は何に使ったのか。

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2017年12月10日 (日)

清水潔「殺人犯はそこにいる」(新潮文庫)

評価5

 ミステリーではなく、ノンフィクション。日本推理作家協会賞受賞作。一時、話題になった覆面文庫「文庫X」としても知られる。

 「一番小さな声を聞け」。筆者が自分に課した「縛り」が、1人の男性をえん罪の監獄から救い出した。調査報道の見本といえる好著。

 群馬県と栃木県の県境の狭い範囲で5人の幼女が行方不明になったり殺害されたりした。筆者は、同一犯による事件ではないかと疑う。しかし、いわゆる「足利事件」だけが、容疑者逮捕、有罪確定により、解決済みとされている。
 筆者は足利事件がえん罪であることを報道、再審無罪を導くが、検察は当初のDNA型鑑定の誤りは決して認めなかった。
 さらに、筆者は、犯人とDNA型が一致する人物を見つけ出し、捜査当局に、「ルパン」に似たこの男について情報提供するが捜査当局は動かない。なぜか。
 検察が鑑定を誤りを認めれば、同じ鑑定によって、犯人とされた男が死刑執行された飯塚事件のえん罪も証明されかねない。検察はこうした事態を避けるため、真犯人の捜査にも及び腰とみられる。
 こうして真犯人は今も、捜査を受けず、野放しになっている。



有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」 (講談社文庫)

評価3

 大学助教授、火村英生とミステリー作家、有栖川有栖のコンビを主人公とするシリーズ第1作の連作短編集。そこそこおもしろい。

「動物園の暗号」
 動物園で起きた殺人事件。被害者が残した暗号の謎がテーマ。被害者がそもそも暗号をつくった意図などがよく分からなかった。面白くなかった。

「屋根裏の散歩者」
 アパートの大家が殺害された。一方、付近では女性を狙った殺人事件が連続。アパートの住民の一人が犯人で、それに気づいた大家が口止めのため殺されたらしい。大家は屋根裏から住民たちの部屋をのぞいて、様子を書き記していたが、どの記述かだれの様子か分からない。火村が仕掛けた罠とは。

「赤い稲妻」
 マンションから女性が転落する。目撃者によると、ベランダにはもう一人の人物がいたが、部屋には鍵がかけられていた。いたとすると、どこから出たのか。女性は弁護士の不倫相手だったが、弁護士の妻も、間もなく、踏切で車に乗ったまま電車にはねられ亡くなった。

「ルーンの導き」
 中国系米国人の編集者が殺害され、占いに使われるルーン文字が書かれた石を4つ握っていた。その意味は。石が4つだったこと、被害者が編集者であることがヒント。

「ロシア紅茶の謎」
 作詞家の男性がパーティーで青酸カリをもられ殺害された。現場からは青酸カリを入れた容器も見つからない。だれもに動機があるが、毒を入れたタイミングや手段がまったく分からない。火村が見破った、犯行手口とは。

「八角形の罠」
 劇団のメンバーがホールの練習室で毒を注射器で注入され殺害された。しかし、凶器の注射器はだれも身につけておらず、意外なところから見つかった。一方、さらに別の劇団員がたばこに仕込まれた毒で殺害される。
 ホールの見取り図が掲載され、読者は作者から謎解きの挑戦を受ける。

 
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2017年10月28日 (土)

佐々木譲「沈黙法廷」(新潮社)

評価3

 タイトルにもある「沈黙」は、一連の事件すべてに通底する何かを隠すための沈黙だと想像し、どんな真相が現れるのか期待していたが、実際には法廷で沈黙を通すのはごく一部。しかも、事件そのものに関することではなく、元恋人への配慮という、いわば小さな理由での沈黙に過ぎず、がっかりした。もちろん、主人公の人柄を描写するため、また、裁判員裁判での判決を導き出すためには非常に大きな要素ではあるが、事件の大きな枠組みとは関係がない。
 まぁ、こちらが勝手に、こういう流れだろうと想像するのが悪いのですが。

 以下、ネタバレあり。

 東京・赤羽で、1人暮らしの高齢男性が殺害され、300万円がなくなった。フリーの家事代行業の女性、山本美紀が男性宅を訪れていたことが判明する。赤羽署の伊室刑事は捜査1課の鳥飼と共に、山本に任意同行を求めるため、山本宅を訪ねるが、すでに埼玉県警大宮署の刑事が到着しており、山本を連れ去った。1年半前に高齢の男性が殺害された別の事件の捜査という。刑事たちは、首都圏連続不審死事件と同様の事件ではないかと疑う。

 伊室らはさらに、山本が家事代行業者から派遣されていた先で、高齢男性が自殺していたことを突き止める。

  埼玉県警は山本を逮捕するが、検察は処分保留のまま山本を釈放する。警視庁はその日に逮捕。山本は起訴された。

 メディアの取材によると、山本はかつて中川綾子と名乗り、川崎市の高齢男性と交際して数百万円を引き出していたという。

 一方、3年余り前、中川綾子を名乗る女性と一時交際していたが、突然行方をくらまされた弘志はニュースを知って驚き、裁判を傍聴する。

 山本は、傍聴を連日続ける弘志と目が合ったとたん、被告人質問で回答を拒否し始めるが、弁護士に説得されて、話し始める。そして、裁判員が導き出した結論は…

 【残念な点】

 新聞が容疑者を呼び捨てにしている部分があるが、あり得ない。筆者はいろいろ取材を尽くしているようだが、こういう基本的なミスがあるとリアリティが失われる。

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三上延「ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台」 (メディアワークス文庫)

評価3

 シリーズの最終巻。といっても、後書きによれば、番外編やスピンオフがあるようです。

 シェークスピアの最初の戯曲集「ファースト・フォリオ」に関する謎解きから、栞子さんの家族を巡る謎が明らかになる。母親、そして、大輔との関係は…

 栞子は、祖父が娘(栞子の母)に残したファーストフォリオの謎に巻き込まれる。オークションに出されたファーストフォリオ3冊のうち、本物はどれか。栞子は母親と競り合う。
 オークションの場面など、大輔の熱い思いが伝わってきて、感動的。
 ハッピーエンドで良かった。

 【誤植】
 211ページ4行目「確認してしていただきましたが」と「して」がダブっている。



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