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2011年12月26日 (月)

イグナシオ・ラモネ「フィデル・カストロ みずから語る革命家人生」(上・下、岩波書店)

評価4

 伊高浩昭訳。

 100時間以上にわたるフィデル・カストロのインタビュー。

 この本を読んで驚いたことがある。下巻328ページでカストロは「補助金や無料サービスは、最も重要で死活的な分野だけに限られることになる」と述べ、2008年以降のラウル・カストロの改革を予告している。「配給手帳は廃止しなければならない」とまで言い切っているのだ。次のページでは「働き生産する者は、より多く支払いを受け、消費財やサービスをより多くもらえるようになる」と言っている。これもラウルが、働きに応じた給料制度を提案したことと重なる。

 ラウルが、労働者給与の上限廃止と成果主義の導入を発表したのは08年の6月であり、本書が07年9月に出版された原書の翻訳であることを考えると、ラウルの改革について、ラウルとフィデルとの間に対立があったなどという推測は吹き飛んでしまう。こうしたことは報道されていないのではないだろうか。

 一方で、物足りないのは、カストロが得意の長広舌で論点をすり替えるのに対し、食い下がりが足りないこと。また、インタビューアーのラモネがカストロ支持者であるためか、もうちょっと厳しい質問をしてほしいという点が残ることだ。

 たとえば、カストロは、米国のキューバ人移民政策を批判するが、ラモネは、キューバ政府がキューバ人の自由な海外渡航を認めていないことについて一切質問していない。

 2010年に欧州連合(EU)欧州議会がサハロフ賞に選んだ反体制活動家ギジェルモ・ファリニャスさんは出国を拒否され、授賞式に出られなかった。2005年には、投獄されている政治犯の妻らがつくる団体「白衣の婦人たち」が同じ賞を受賞しているが、やはり出国を認められていない。ブログで体制批判をしているヨアニ・サンチェスさんも欧米でさまざまな賞を受賞しているが、出国を認められていない。キューバ人が出国するためには「カルタ・ブランカ(白い手紙)」と呼ばれる出国許可証が必要だが、海外受け入れ側の招待状を用意するなど、煩雑な手続きが必要で、取得は困難らしい。

 また、カストロが、外国への医師団派遣など医療面での国際協力をアピールしているが、外国で医師が亡命してしまう人材流出問題について触れていない。

 ただ、反体制派の改憲運動「バレーラ計画」についてはかなりしつこく質問している。カストロの回答に説得力がないのが残念だが。

 また、反体制派に対して重い刑罰が科されたことも追及しているが、カストロはそれが法律上正当であることを主張しているのに対し、その法律が正当かどうかについての追及が弱い。

 報道の自由の欠如についてかなり詰め寄っているが、カストロの考えはかなり頑迷だ。

 巻末の年表は詳細で、キューバ好きには役に立つ。

 翻訳について。訳者はこだわりを持って訳語を選んでいるようだが、グローバリゼーションを全球化と訳したり、コンピューターを電脳と訳すなど、中国語訳をそのまま日本語に当てはめるのには違和感を持った。

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コメント

はじめまして
中国語訳をそのまま日本語に当てはめるのには違和感を持った、と書かれているのに対して気になってコメントさせていただきます。この訳書は僕も去年買って、正直なところあまり満足していないのですが、原書は中国語版なのですか?正直ショックです
インタビューは当たり前のことですが、スペイン語で行われていて、ネット上でも一部を見ることが可能のようですが。
長文で失敬

venceremos さん、コメントありがとうございます。
 申し訳ありませんが、わたしの書き方が不適切だったようです。「そのまま」というのがいけませんでしたね。ごめんなさい。
 訳者は中南米の専門家で、当然スペイン語ができます。翻訳に使った原書はスペイン語版だと思います。

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